いよいよ僕がこのスタジオで初めてシーンを演じる時がやってきた。

ティーチャー・トレーニングでは、とにかく徹底的にスタジオのクラスの見学をするのだが、もちろん実践の場が設けられている。

自分たちも生徒たちに混じり、シーンを演じるのだ。

そして、当然と言えば当然だが、スタジオで初めての演技をしたのは、イヴァナの前ではなかった。

イヴァナのスタジオには、通常、4人から5人の常勤講師がいる。

全員がイヴァナのメソッドを教えているのだが、経歴や経験によって、指導スタイルは全然違う。

ティーチャー・トレーニングでは、イヴァナの前で演技をする前に、他のクラスで演技をすることが要求され、最終的にイヴァナの前で演じる。

僕と一哲が最初に演技をしたのは、アドバンス・クラスを担当する、マイケル・モンクスという講師の前でだった。

マイケル・モンクス氏は現役の俳優でもあり、自分が出演した作品の宣伝をクラスの中でさらっと入れる(笑)。彼の情報はこちら。
https://www.imdb.com/name/nm0598282/


個性派揃いの講師陣の中で、彼の指導はわかりやすく、もっともとっつきやすい、と感じていた。

渡米後、常に行動を共にしていた僕と一哲は、当然のごとく、シーン・パートナーとなった。

初めてもらったシーンは、映画「Boiler Room」からのシーン。

正直、当時は知らない映画だった。

どんな映画だろう?あ、若い時のベン・アフレックが出ている!

そのくらいの印象だった。

後から日本で調べるとタイトルは、

「マネーゲーム 株価大暴落」というタイトルでDVDが出ていた。

2018年の来日ワークショップでも演じられたこの映画、イヴァナのスタジオでは定番です。 このサイト内にも解説記事があるのでどうぞ。
https://inthevortex.co.jp/%E6%8A%95%E8%B3%87%E3%81%A8%E6%98%A0%E7%94%BB%E3%82%92%E3%82%81%E3%81%90%E3%82%8B%E3%81%8A%E9%87%91%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E4%BE%A1%E5%80%A4%E8%A6%B3/


当時、現地で日本語字幕付きのものは入手できなかったので、向こうのDVDをそのまま見て、英語のスクリプトを手に、僕らは稽古を始めた。

一哲の当時の感覚はわからないが、僕的には台本分析も、インナーワークも、何もかも曖昧な理解のまま、とにかくやってみる、という感覚だった。

最初なので、一哲の場合は、英語の発音との格闘も当然あった。株式の専門用語もあったので、感覚を掴むのは大変そうだった。

何もわからないながら、2人で力を合わせ、とにかくやるだけやった、という感じだった。

僕はとにかく、やるだけで必死だったが、一哲はいろいろ細かい演技を試してみようとしていたのが印象に残っている。

今も感じるが、どれだけ見学してみても、演技はやってみてなんぼのものだ。

僕は一哲との初めてのシーンワークを愉しんだ。

クラスで 2度演じたあと、当時の僕はフェイスブックにこう書いている。

“Boiler Room”「マネーゲーム」からのシーンを再び演じました。チャバック流演技の基本は、どんな役柄を演じようと、『必ず勝つ」ために演技すること。自分が正義の味方だろうが、悪の権化だろうが自分の視点から見れば「自分は絶対に正しい」という事を絶対にあきらめるな、と指導されます。

シーンの中で結果的に負ける事になっていても、あきらめずに相手の上をいこうとする意気込みを見せる事が求められます。

僕らのシーンも映画ではヴィン・ディーゼル演じるクリス役はいい人らしさを見せていたので、僕もそのように演じようとしたところ、講師のマイケルから、相手のセスに対し、お前のせいで俺の人生は破滅だ!という視点を思い切り出して勝ちにいけ、という指導を受けました。

その視点で対立をいとわず、あくまで勝ちにいくと、緊張感のあるシーンに思いがけないユーモアが生まれ、観客席から笑いが生まれたりしました。

「へーーーっ!」と目から鱗の瞬間でした。2人で演じるシーンの面白さは、どちらもへりくだる事なく、かけあいをしたり、戦術を駆使したりしてあくまで自分のゴールを勝ち取りにいくこと。

僕も一哲もチャバック流演技法の洗礼を受けた感じです。これが始まりであり、一つ一つ体験しながら自分のものにしていきたい。

写真は直前のリハーサルの光景。真っ青な空が気持ちいい!

2019年の後半、この記事を書いていて、大切なことを想い出した。

そう、自分が愉しむことが何より大事。

僕も演技を始めた時は、ただ愉しかっただけだった。

イヴァナの演技術を実践することも愉しいんだ!

あなたも演技を愉しんでいますか?