LAのレストランで初対面し、僕と妹を信頼してくれたイヴァナは、クラスの見学を勧めてくれた。

嬉しかった。

たった一瞬の思いつきで送った1通のメールから、こんな展開が待っていようとは。僕は、ついにイヴァナの世界に足を踏み入れるのだ。

初めての時は、誰にとっても、特別な体験となるものだ。

僕にとって、あの夜のイヴァナ・チャバック・スタジオのクラス見学は、一生忘れない宝物のような、そして衝撃的な体験だった。

イヴァナメソッドの衝撃

イヴァナのスタジオは、住所としてはウェスト・ハリウッドという地域にある。メルローズ通りという、ハリウッドでもかなりメジャーな通り沿いだ。

映画の都・ロサンゼルスのメルローズ通りには、劇場や演技学校も幾つかある。だが、そんな中、イヴァナ・チャバック・スタジオは、全く目立とうとしていない。派手でモダンな空間からも程遠い。

目立たない入り口から入った建物の2階にひっそりと存在する、いかにも、”演劇の場”という空間だ。

メイン・スタジオがある2階に向かう階段の壁には、クラシックな映画のポスターの額縁が飾られ、否が応でも俳優たちのインスピレーションが掻き立てられる。

小さくて、あまり強く主張しないIvana Chubbuck Studioという看板は、2階のスタジオの入り口に、遠慮がちにちょこっとかかっている感じだ。

通りを歩いていて、たまたまこのスタジオを見つけることはほぼ不可能。

全く宣伝をせず、口コミだけで広がってきた、というこのスタジオには、今でも、そのレガシーが息づいている。

さて、僕がイヴァナ・チャバック・スタジオに初めて足を踏み入れた、記念すべき日のことだ。

イヴァナのスタジオでは、様々なクラスが行われているが、イヴァナが直接教えるのは最上位のマスター・クラスのみ。マスター・クラスは火曜、水曜、木曜の夜、7時から10時まで行われている。

イヴァナのクラスは、曜日ごとにクラス分けがされている。つまり、火曜、水曜、木曜で、参加するメンバーは違う。

僕と妹が見学を許されたのは、木曜日のクラスだった。

後から分かったことだが、木曜日のクラスは、外部からの見学者が入ることを前提にメンバーが構成されている。必然的に非常にレベルが高い。

初めて見る、イヴァナのマスタークラスの生徒たちの演技は圧巻だった。

そして、イヴァナの指導スタイル!

なんだ、これは!? 

という驚きが3時間続く、衝撃の演劇体験だった。

「誰を使っているの?」

という質問から代替者を掘り出し、俳優とその代替者を徹底的に向き合わせる。そのアプローチは、何かとんでもないものを発見してしまった、という驚きに満ちていた。

その時は、テクニックがどう使われているのか、正直、ほとんどわかっていなかった。

だが、イヴァナが伝えているのが、「演技」ではなく、その俳優本人の資質を引き出すものであることは、あの空間のエネルギーから感じ取れた。

うわ!これ、凄い!

この時だった。

これは本気で日本に伝えたい、という真剣な想いが生まれたのは