イヴァナチャバック・ワークショプ・ジャパンの白石哲也です。
いよいよ2020年のイヴァナ来日ワークショップも近づいてきました。
イヴァナのテクニックをマスターしたい人のために定期的に開催しているムービーナイトでは、近い将来、俳優として映画で舞台で大きな実績を出そうと頑張っている皆さんと共に、イヴァナ流の台本分析に取り組んでいます。
2019年9月に取り上げた映画の1つが、アカデミー賞で脚本賞とケイシー・アフレックが主演男優賞に輝いた「マンチェスター・バイ・ザ・シー」です。
採用シーンは、主人公のリーと、再婚した相手との間にできた赤ん坊を連れた元奥さんのランディが再会する、観客の感情を非常に掻き立てる名場面。LA Bootcampでも取り上げられました。
ムービーナイトでは、イヴァナの演技術の基本である、12ステップの最初の4ステップである「全体の目的」「シーンの目的」「障害」「代替者」までを中心に取り組んでいます。
そして来日ワークショップでもこの部分の徹底理解が一番大きな結果に繋がります。これを深堀りしていくと、イヴァナが俳優に強烈に求めるものは何か、というテーマに行き着きます。
誤解していただきたくないのですが、もちろん、イヴァナが言っているとおりに演じろ、というような独善的な話をしているわけではありません。
答えを言ってしまうと、イヴァナが俳優に強烈に求めるのは、
自分の中を本当に、本当に、本当に、
深く、深く、深く、深く、深く掘っていく、ということです。
そして、その中から出てきた自分の人生において絶対に勝ち取りたい、本当に大切な真実を、演技という架空の世界に結びつけ、イヴァナの言葉で言えば、リスクを取って勇気を持って、それを達成することに挑戦してもらう、ということなのです。
これは、最近ある俳優と話していて得た気づきなのですが、ある意味、「演技の世界」の方が、現実よりも「真実」を体験することができる、ということです。
なぜならば、僕たちの現実世界がほとんど嘘で成り立っているからです。
イヴァナが俳優に求める「美しさ」とは
少し考えてみてください。日常生活で、僕たちは、どれほど人に常に感動を与えるような輝きで満ちた時間を過ごしているでしょうか?
イヴァナの指導によって俳優が変わるところを見て感動するのは、そこにあるのが、僕たちの日常ではなかなか見ることのできない、誰もが共感することのできるような大きな障害を超える、という行為に果敢にチャレンジする俳優の姿が見られるからなのです。
それは本当に美しい瞬間なのです。
この会でも、イヴァナの演技術のマスターすることに熱心な俳優さんたちが集まり、元奥さんのランディの視点での役作りでパーソナル化まで取り組んだのですが、その中で、ある女優さんに「アーハー!」モーメントが起こりました。
ヘレン・ケラーであれば、「ウォーター!」と叫ぶ瞬間です。
彼女の中で、イヴァナのパーソナル化のワークに取り組むことで、自分の中の非常に深い部分に触れることになり、結果、自分の心のディフェンシブなメカニズムに気づいたのです。
それと同時に、彼女の中にあったイヴァナのワークに対する迷いの理由もわかったそうです。加えて更に、イヴァナのワークが米国の演技をダメにした、といった批判(があるらしいのですが)の浅さがわかった、という気づきにもつながったそうです。
イヴァナの演技術の基本は、台本分析です。そして、その過程においてパーソナル化を行います。
イヴァナが俳優に求めるこの作業は、決して簡単ではなく、身につけるまでに時間もかかるし、正直言って大変です。
簡単ではない。だからやる価値があります。
なぜなら、それは、あなたが自分の中の最大のデーモンに打ち勝とうと取り組むこととイコールであり、あなたが、真剣にそれに取り組んでいるのを目にして、感動出来ない人はいないからです。
そういう意味で、僕は、イヴァナの演技術に興味を持ってくださった皆さんには、長い目で、このワークに取り組んでもらいたいのです。
僕自身も少しずつ、自分の中のデーモンに対峙しています。
あなたが仲間に加わってくださるのを心からお待ちしています!