映画「クレイマー・クレイマー」は1979年に公開され、第52回アカデミー賞では作品賞・監督賞・脚色賞・主演男優賞・助演女優賞を、また第37回ゴールデングローブ賞でも、ドラマ部門作品賞を受賞した不朽の名作です。

邦題の「クレイマー・クレイマー」という題名からは、そのタイトルの意味をつかむのが難しいですが、オリジナルタイトルを見れば、その意味は一目瞭然ではないかと思います。

原題は「Kramer vs. Kramer」

つまり、Mr.Kramer(夫)とMrs.Kramer(妻)の対決映画というのが、「クレイマー・クレイマー」という映画タイトルの意味なんです。

なんの対決かというと「子供の親権」と「養育権」を巡る夫婦の離婚に関する対立で、夫婦の間に挟まった一人息子も巻き込んで起こる悲喜こもごもを丁寧に描いた家族の物語です。

映画タイトルの意味は、オリジナルの方がより正確な解釈に結びつくことも多いので、邦題だけでなく原題も探ると映画の本質や解釈の意味が見えてくるような気がします。ご参考までに。

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クレイマークレイマーの簡単なあらすじ

映画「クレイマークレイマー」は、ごく簡単に言えば、夫婦の離婚裁判と親権争いの物語なんですが、実は、この映画の冒頭は、かなり掴みが強いです。

テッド(ダスティン・ホフマン)の妻であり、一人息子のビリー(ジャスティン・ヘンリー)の母親であるジョアンナ(メリル・ストリープ)が、突然理由も言わずに家を出てく行ってしまうところから始まるからです。

観客はその理由もわからず、いきなり夫婦崩壊の現場を目にすることになるわけですが、説明なしの急な展開ですから、妻のジョアンナのわがままさ、自分勝手な振る舞いに度肝を抜かれます。

ほとんどの観客が妻の自分勝手さに驚いた結果、その事情を知りたいという感情が否応なしに芽生えるという作り。見事というしかない構成ですね。

さて、その舞台になるのはニューヨークのマンハッタン。

夫のテッド・クレイマーは仕事一筋で大きな昇進を目前に控える中で、さきほど書いた妻の家出という一大事が起こるのですが、内情を紐解くと現代の日本の多くの家庭でも普通にあるように、夫は家事と育児を妻のジョアンナ・クレイマーにすべて押しつけていたことが原因だとわかってきます。

毎晩深夜に帰宅する仕事人間の夫に愛想を尽かし、本当の自分を取り戻すために妻のジョアンナは家出するわけです。

そして、その翌日から夫のテッド・クレイマーは7歳の息子・テッドを抱え、仕事と家庭を否応無しに両立しなくてはならない状況に追い込まれます。

食事の用意から学校への送り迎え、そして会社での激務の毎日。自分が今まで仕事しかせず、大事な息子との時間を過ごしていなかったことにも気づきながら、試行錯誤を繰り返して息子との時間を取り戻そうと必死の努力をするのです。

そして、妻のいない生活がやっと平穏に回り始めたころ。家出していた妻・ジョアンナが息子の親権(養育権)を主張して、夫・テッドを提訴。裁判へと突き進むというのが、映画「クレイマークレイマー」の大まかなストーリーの流れです。

夫と妻の裁判の行方、そして、大好きなパパとママの間に挟まった子供の揺れ動く気持ち。とても丁寧に心の機微を描いた本当に名作だと思います。

また何度も書くようですが、この映画は1979年製作の作品です。

日本がいかに今だに旧態依然とした男女関係であるのかと考えさせられましたし、アメリカの男女関係に関する先進性や権利を勝ち取るための闘争の歴史の一端も改めて感じることになりました。

クレイマークレイマーの意味と音楽の意外な関係

さて、この記事のタイトルでもある「クレーマークレーマーの意味と音楽の意外な関係」についても、お話しておきましょう。

映画「クレイマークレイマー」のテーマ音楽には、バロック末期の作曲家として有名なアントニオ・ヴィヴァルディの曲「マンドリン協奏曲ハ長調 RV.425」、世間では一般に「ギターとマンドリンのための協奏曲」という曲が採用されています。

マンドリン協奏曲ハ長調 RV.425

映画の冒頭のシーンの中でも、ギターとマンドリン奏者が路上で演奏しているのが画に移りますし、とても耳障りのよいその音楽はとても印象的で、この映画をより魅力的なものにしていると思います。

ギターとマンドリンは同じ弦楽器ですし共通点は多く、その大きさと音色が違えど形状などはまるで「親子」。

そうです。

これが、監督のロバート・ベントンが映画「クレイマークレイマー」のテーマ音楽にヴィヴァルディを採用した理由ではないかと個人的に想像したことです。

親(ギター)と子(マンドリン)が奏でる音楽のハーモニーは、映画「クレイマークレイマー」で語られる家族の物語の本質を、まるで音楽それ自体で表現しているかのように思います。

親と子が奏でる家族の物語とギターとマンドリンの協奏曲との関係。

子供の甲高い声がピッチの高いマンドリンの音色、親の声はギターが奏で、お互いに補完しながらもアンサンブルの一曲の音楽を奏でる。そんな狙いがヴィヴァルディの曲を使った監督の意図にはあったのではないでしょうか?

これが、記事タイトルの「クレーマークレーマーの意味と音楽の意外な関係」ということの回答になります。ご賛同いただけるでしょうか?

ちなみにプチ・トリビアですが、日本は、マンドリン人口世界一だそうです。意外でした・・・

映画「クレイマークレイマー」予告トレイラー

映画「クレイマークレイマー」のスタッフ&キャスト

制作スタッフ

監督ロバート・ベントン
脚本ロバート・ベントン
製作スタンリー・R・ジャッフェ
原作アベリー・コーマン
撮影ネストール・アルメンドロス
音楽ヘンリー・パーセル

出演キャスト(役名)

役名キャスト
テッド・クレイマーダスティン・ホフマン
ジョアンナ・クレイマーメリル・ストリープ
ビリー・クレイマージャスティン・ヘンリー
マーガレット・フェルプスジェーン・アレクサンダー
ジョン・ショーネシーハワード・ダフ
ジム・オコナージョージ・コー
フィリス・バーナードジョベス・ウィリアムズ
グレッソンビル・ムーア
スペンサージャック・ラメージ

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イヴァナチャバック・ワークショップ雑感

映画「クレイマークレイマー」は、2018年のイヴァナチャバック 来日ワークショップでも演じられましたし、シーンワークやムービーナイトなどでも度々取り上げてきた映画作品です。

男と女、仕事と家庭や子育てという、時代がどんなに変わっても必ず表面化してくる家族の問題として、とても深いテーマを含んだ映画作品だからこそ、この作品を教材として選んできたのだと思います。

先ほども書きましたが、1979年に公開された「クレイマークレイマー」ですが、その映画公開から40年後以上経た今、この現在に見ても、観客に深く訴える力をこの作品は持っています。

そして、その映画の力を支えている大きな要素のひとつとして、ダスティン・ホフマンやメリル・ストリープを初めとした俳優陣の演技であることも、皆さんには改めてお伝えしておきます。本物は残る、という証拠かも知れません。

さて、イヴァナのワークショップでプレイヤーが演じてくれたのは、1年も経ってから、テッドが家出していた妻からの連絡を受けカフェで久しぶりに再会し、子供のことについて話しあうシーンです。夫と妻それぞれの思惑が絡み合い、二人のエキサイティングな会話が進んでいきます。

演技の教材としては最高の映画だと思いますので、是非、まだ見たことがない方はご覧になってください。

そして、今度は、プレイヤーとして「あなたならではのテッド、またはジョアンナ」を表現してもらえればと思います。期待しています。